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  • ピックアッププレイヤー 2017-vol.10 / 中村憲剛×大西卓哉 対談「夢をカタチに。」後編

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SEASON 2017 / 
vol.10

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中村憲剛×大西卓哉

夢をカタチに。

中村憲剛×大西卓哉 SPECIAL TALK 後編

構成:原田大輔 写真:大堀 優(オフィシャル) 写真提供:JAXA他

edited by Harada, Daisuke photos by Ohori,Suguru (Official) / JAXA / etc.

< 前編はこちら

子どもたちにとって憧れの職業でもあるサッカー選手と宇宙飛行士。
中村憲剛選手、大西卓哉宇宙飛行士のふたりは、その夢をどのように叶えてきたのか。その過程には、それぞれの考えと行動、そして共通点もあれば、相違点もあった。
ふたりのトークから導き出される“夢をカタチにする”方法とは?
そこには、夢を抱く子どもたちに、伝えたい、聞かせたい、たくさんのメッセージがある。

「訓練をやるだけやってきたから、大丈夫だと開き直れた」—— 大西卓哉

—— 対談に臨む前に、中村選手は、大西さんの魅力を引き出したいと意気込んでいましたが、質問は尽きないですね。

中村(以下中村)「ずっと話していられるくらいですよ。まだまだ、たくさん聞きたいことがあります(笑)。少し話が戻ってしまうのかもしれませんが、どうしてもお聞きしたかったのが、地球から宇宙に飛び立つ瞬間の心境とはどんなものだったんですか?」

大西(以下大西)「実は、それ、自分自身でも飛び立つ前は疑問だったんですよね」

中村「大西さん自身も疑問だったんですね(笑)。実際、どうだったんですか? すごい興味があったんですよね」

大西「ロケットの中のシートに座り、上を向いて待っていると、それこそカウントダウンがはじまるわけですが……そのときの心境だけはどんなに厳しい訓練をしても分からなかったんです。もし、怖くなったらどうしよう、逃げ出したくなったらどうしようと……」

中村「パニックに陥ってもおかしくはない状況ですよね」

大西「そうなんですよ。ただ、いざ、そのときになったら、ものすごい落ち着いていました。あとあと考えたときに感じたのは、それもこれも訓練の成果なんだと思います。ずっと同じ流れを訓練してきて、やるだけやってきたから、きっと大丈夫だろうと。ある意味、開き直れたんですよね」

—— ある意味、覚悟を決めるということですよね。サッカーにおいても似たような状況はありますか?

中村「これは僕の場合ですけど、シュートが決まるときって、ある意味、開き直っているかもしれない。ちょっとニュアンスは違うかもしれませんが、決断が早いんですよね。迷っているときは入らない」

大西「なるほど。ようするに思い切りということですよね」

中村「そうですね。相手がいようが、打つって決めてシュートしたときは、だいたい決まるんですよね。ただ、サッカーって面白いもので、全く同じ状況というのはまずないのですが、似たような場面でシュートしている自分と、迷う自分がいるんですよね」

大西「その差であり、違いというのは何なんですか?」

中村「何なんですかね(笑)。周りの動き、自分の調子、試合の得点差、それこそ気候まで考えたら、全く同じ状況って本当にないのに……」

大西「プロのサッカー選手も、調子の善し悪しがあるということですか?」

中村「きっと、そういうことなんでしょうね」

大西「でも、コンディションが悪いときでも、何とかしなければならないのがプロの世界ですよね?」

中村「調子が悪いと感じたときってボールを欲しがらない選手が多いんですけど、僕の場合は逆なんです。調子が悪いから、(ボールに)触りたくはないんですけど、そうすると視界から消えてしまうので、悪いときは悪いなりにチームの足を引っ張らないように、丁寧にプレーしようとする。一か八かのプレーは減らすように心掛けるんですよね。とはいえ、基本的には良い準備をして、試合に臨むという信念と、良いイメージを持って試合に臨むことを常に意識しています。それにたとえミスをしたとしても、90分の中で挽回できるチャンスを、また自分で作り出せばいいわけですから。ミスが許されない宇宙飛行士とは違うかもしれません」

大西「実は、そこは興味があったんですよね。サッカーでは、1試合に何度も、何度もプレーする機会が訪れますよね。それでいて、ゴールにつなげられないプレーのほうが圧倒的に多いわけですよね。1試合の中では、当然、ミスもあるわけで、そうしたとき、どうやって気持ちを立て直しているんですか?」

中村「あっ、それは先ほど、大西さんがおっしゃった開き直りに近いかもしれません。『次、次!』みたいな感覚です。当然、人間なので、ミスを冒してシュンとなってしまう選手もいるのですが、ミスをしても、そこからグッと持ち直してくる選手が多いほうが、勝つ確率は上がってくると、僕は思いますね」

大西「やっぱり、メンタルが大事ということですね」

中村「かなり大事だと思います。これはサッカーに限った話ではないと思いますけど、何事にもメンタルが占める割合というのは大きいと思います。試合では、どれだけ強気でいられるかというのも大事なんですよ。相手にハッタリをかますじゃないですけど、たとえやられたとしても、全然、平気な表情をすることも大事」

大西「なるほど。試合中にはそういう駆け引きもされるんですね」

中村「『どうした? こっちはまだ余裕だぞ!』という表情をするときもありますね。特に僕は、相手の顔をよく見るんですよ。その表情を見て、相手がちょっと動揺しているなとか、焦っているなとか、もしくはガンガン攻めてきそうだなというのを判断しながらプレーしているんです」

大西「表情を読む。それはかなりおもしろいですね」

中村「もう15年もプロでやっていますからね。ちなみに、表情から読み取れるメンタル面はプレーにも表れるんです。これは絶対に抜こうとしてくるなとか、パスを選択してくるなとか。それによって自分のプレーを変えたりもしています。宇宙飛行士の場合は、僕らで言う対戦相手、敵という存在がいないと思いますが、その代わりクルーも含めてスタッフは、国籍や性別も違えば、年齢層も幅広いだけに、ひとつにまとまるのは大変じゃないですか? 僕の場合、Jリーグでプレーしているので、それほど多国籍ではないですから」

大西「確かにそこは幅広いですね。ただ、いろいろな国の方たちと接して感じたのは、それぞれ文化によって違いはありますけど、結局、個のパーソナリティーが大きいと思いましたね。日本人にも、いわゆる日本人っぽいと言われる人もいれば、そうじゃない人もいるように、他の国の人も同じ。だから、その人を知ることが重要で、チームとして組んでやっていく難しさというのは日本人だけのチームでも、いろいろな国籍の人たちと組んでやっていくのでも変わらないと思います」

夢をカタチに。中村憲剛×大西卓中村憲剛×大西卓哉 SPECIAL TALK 前編

「取り組んできた経過があってこそ、スタートラインに立てた」—— 大西卓哉

—— 話は変わりますが、ふたりは、サッカー選手と宇宙飛行士と、子どもたちが憧れる職業に就きました。なりたいと思ったきっかけや時期はいつだったのでしょうか?

中村「それは僕も興味ありますね」

大西「もともと子どものときから宇宙には興味があったんですけど、宇宙飛行士になりたいということを意識したのは、大学生のときですね。映画の『アポロ13』を見て」

中村「はいはい! 僕も見ました」

大西「その映画を見て、ものすごい影響を受けたんです。それで宇宙飛行士になりたいなぁと。本当にそれだけです(笑)」

中村「えっ〜! それがきっかけですか? 漫画の『キャプテン翼』を読んでサッカー選手になりたいと思うのに近いですね?」

大西「まさにそれに近いですね(笑)」

中村「僕は小学校1年生からサッカーをはじめて、Jリーグが開幕したのが中学1年生のとき。小学校の卒業文集にはJリーガーになりたいと書いていたような子どもでした。でも、そこから甘くはないな、難しいなという時期を過ごし、高卒でプロになれるわけもなく。だから、実際のところは、大学に進学してからですかね。徐々に力をつけてきて、ひょっとしたらプロになれるかもしれないと思ったのが大学4年生のとき。それでコーチに『Jリーグでプレーしたいです』と話をして、練習参加させてもらったのがフロンターレだったんですよ。でも、振り返ってみたら、(プロサッカー選手に)なれるとは思わなかったですけど、無理だとも思わなかったんですよね」

大西「なれると思わなかったのは何でですか?」

中村「それは単純に、自分に力がなかったからです。やっぱり、自分に自信がなかったんでしょうね」

大西「でも、私も宇宙飛行士になれるとは思わなかったですよ。なりたいなとは思ってはいたし、宇宙に行ってみたいなとも思っていましたけど、なれるとは思わなかった」

中村「映画『アポロ13』を見た後は、ご自身の進路も変わったんですか?」

大西「それはなかったですね。今でこそ、宇宙飛行士は珍しい職業ではないのかもしれませんが、私が映画を見た当時、宇宙に行った日本人は2〜3人。非現実的な夢でしたよね。当然、自分も宇宙飛行士になれるとは思っていなかったので、真剣にそれを追い求めてやってきたわけではないんです」

中村「そうだったんですね。逆にその言葉に勇気づけられる子どもはたくさんいると思います。きっと、迷っている子どももたくさんいると思うので」

大西「そうですかね。でも、それでいいとも思うんですよね。宇宙飛行士という目標は、子どもじみた夢として自分の心に置いておいて、大学生のときに、現実的に何の職業に就こうかと考えたときに、選んだのがパイロットでした。自分がラッキーだったと思うのは、宇宙飛行士になりたくてパイロットになったわけではなかったのに、宇宙飛行士になるときに、自分を一番、助けてくれたのが、そのパイロットとしての経験だったというところです」

中村「今の言葉、すごく深いですね。実際のところ、どのタイミングで宇宙飛行士を目指したんですか?」

大西「宇宙飛行士になるには試験があるのですが、頻繁にあるわけではないので、私自身もしばらくは忘れていましたよね。でも、偶然に仕事で宿泊していたホテルで新聞を読んでいたら、JAXAが10年ぶりに宇宙飛行士を募集するという記事を目にしたんです。それがちょうど32歳のとき。仕事にも慣れ、自信もでき、肉体的にも精神的にも充実してくるときでした」

中村「まさに大西さんにとって、ベストなタイミングだったということですね」

大西「本当にそうです。これが40歳を過ぎていたら、その一歩を踏み出せていたかどうかも分かりませんからね」

—— ふたりとも夢を諦めなかったといいますか、その目標に向かって自分なりに道を進んできているようにも感じます。

大西「どうなんですかね。目の前にあるやるべきことを、そのとき、そのときで一生懸命やってきたら、最終的に、もともと自分の夢だった宇宙飛行士になろうと決断したときに、それが自分を助けてくれましたよね。大事なのは、そういうことなのかなと思います。自分がやるべき仕事を全力でやる。それが自分を成長させてくれ、自分が本当にやりたいことをやるときの支えになるんだと思います」

中村「最終的にはタイミングなのかもしれないですが、そこまでの準備を怠っていたら、自分自身で、その扉を閉じていたかもしれないですよね」

大西「本当にそう思います。そこまでいろいろなことに取り組んできた経過があってこそ、宇宙飛行士を目指そうと思ったときに、そのスタートラインに立てたんだと」

中村「グッときますね。だから、別に子どものころからギラギラしていなくてもいいということですよね」

大西「私も、そう思いますね。私自身も迷いましたし、まさか、なれるとも思っていませんでしたから。でも、人間なので、それが当たり前だとも思うんですよ」

中村「僕の場合は、サッカーが好きで、そのゴールがプロのサッカー選手でした。だから、結局、サッカーをやるしかないんですよね。もちろん、思春期にはいろいろな誘惑に負けそうになったこともありますけど、結局はサッカーが好きで、ボールを蹴ることが大好きだった」

大西「それが大事なんだと思います」

中村「僕の場合は、サッカーをしない自分が想像できなかったんです。だから、大学生のときも最終的には就職活動もしなかった。プロになれなかったときの保険として、就活することもできましたが、それをやったら、自分自身が負けだなって、どこかで思ったんですよね。自分で自分の退路を断ったところはありました。だから、先ほども言いましたけど、(サッカー選手に)なれないかもなとは思いましたけど、無理だとは思わなかったんです」

「ベタですけど、諦めたら、そこで終わり。今もその思いでやっている」—— 中村憲剛

—— 夢を叶える過程こそ違いますが、ふたりにはどこか共通しているところがありますね。

大西「そうかもしれませんね。まあ、宇宙飛行士になってからも大変でしたけど。本当に訓練ばかりなので(苦笑)」

中村「漫画『宇宙兄弟』を愛読しているのですが、まさに訓練はあんな感じなんですか?」

大西「あっ、読まれているんですね? そうですね、かなり大変です(笑)」

中村「でも、漫画では1ページで2カ月くらい過ぎることもありますよね(笑)。実際のところは違うのでは?」

大西「そんな簡単にできるようにはならないですよね。だから、こっちとしては、たまに『おい!』って突っ込みたくなるときもあります(笑)。絵的には面白くない訓練もあるのですが、それはそれで大変だったりするんです」

—— 中村選手ならば練習、大西さんならば訓練の過程で、心が挫けそうになったことはありましたか? また、そのとき、気持ちを奮い立たせられた要因は?

大西「実際に挫けることはなかったですけど、心が折れそうになったことは、しょっちゅうありました。何で、こんなにきついことをやらなければいけないんだろうと思ったり。今日はもう勉強はやめて、ゲームでもやってしまおうかと思ったことは一度や二度じゃないですね。でも、結局はやらなければ前には進めないので、戻るみたいな感じですかね」

中村「結局、やらなければ、自分に跳ね返ってくるんですよね。やらなければ、自分が損をするし、自分の評価が下がる。僕の場合、学生時代には、試合に出してもらえず、水を用意したりと雑用をやっていた時期もありました。正直、嫌でしたけど、自分でやめようと思えば、いつでもやめることはできた。でも、やっぱり試合で活躍する自分を思い描いて、やるしかない。そういう自分でありたいと思って、自分に自分で期待していたんですよね。だから今回、大西さんと話をして、大西さんも宇宙に飛び立つ自分の姿を思い浮かべながら、訓練に励んでいたのではないかなって感じました」

大西「まさにそうですね。綺麗にまとめられちゃいましたね(笑)」

—— 自分を弱くするのも強くするのも自分自身ということですね。一方で、その困難から逃げてしまう人もいるような気もします。

中村「たとえ逃げても、戻ってくればいいと思うんですよね」

大西「そうですよね。私も、何度、逃げ出しそうになったことか」

中村「僕も逃げるときはありますから……。今日はストレッチをしなくていいかなって思うときも(苦笑)。でも、そこでやめてしまったらダメだと思って、結局はやるんです。そうした葛藤はたくさんありますし、人間だから、あって当然だとも思うんですよね」

大西「その言葉を聞いて、すごい安心しました」

中村「本当ですか? 実は僕も安心しました。だって、宇宙飛行士って、どこか完全無欠なヒーローのイメージがあるので」

大西「いやいや、全然、そんなことはないですよ。家庭ではだらしなくて、怒られてばっかりです(笑)」

中村「ホントですか? 僕も一緒だ(笑)」

—— サッカー選手、宇宙飛行士という夢を叶えたふたりに、これから夢を目指す子どもたちにメッセージをお願いします。

大西「中村選手は好きなこと、得意なことを突き詰めた人だと思うので、私のメッセージはまた違った視点になるかと思いますが、僕はどちらかと言えば、苦手なことや得意ではないことをがんばることで成長してきたタイプなんです。だから、子どもたちには、苦手なことにもがんばって取り組んでいれば、自分が本当に好きなことをやるときに、それが自分を助けてくれるということを、自分の経験から伝えたいですね」

中村「これは重みがありますね。僕からは、先ほども言いましたけど、自分で自分の限界を決めないでほしいということですね。むしろ開放するくらいの勢いでがんばってほしい。それこそ苦手なことも、得意なことも、やればやるだけ、自分の実になると思うので。ベタですけど、諦めたら、そこで終わり。僕は今もその思いで、36歳までサッカー選手をやっているわけですから(笑)」

—— 最後に、これは筆者がどうしても聞きたかったことなのですが、夢を叶えたふたりが抱く今の夢は何ですか?

大西「私は、他の星に行ってみたいですね。月でも火星でもいいので、他の惑星から地球を見てみたい。かなり厳しいことも分かっていますし、子どもじみた夢かもしれませんけど」

中村「とってもカッコイイ夢ですね。僕は自分がどこまでやれるか、自分にすごい期待しているというか、楽しみというか」

大西「あれ? 優勝じゃないんですか?」

中村「そこは、大前提としてあるんですけど、僕が言いすぎると、周囲に対してプレッシャーになりすぎるということを去年感じて反省したんです。今年はキャプテンでもないですし、とにかく自分自身を謳歌する、自分をより成長させるというテーマでプレーしています。純粋にもっとサッカーがうまくなりたい、楽しくプレーしたいなって思っています」

(2017年8月15日 於:宇宙航空研究開発機構 東京事務所 聞き手:原田大輔)

profile
[おおにし・たくや]

東京大学工学部卒業後、全日本空輸株式会社入社。2009年2月、JAXAよりISSに搭乗する日本人宇宙飛行士の候補者として選抜される。同年4月JAXA入社。ISS搭乗宇宙飛行士訓練を経て、2011年7月、油井亀美也、金井宣茂とともにISS搭乗宇宙飛行士として認定される。2016年7月~10月、ISS第48次/第49次長期滞在クルーのフライトエンジニアとしてISSに約113日間滞在。滞在中は、日本人初のシグナス補給船のキャプチャを遂行。「きぼう」船内に新たな利用環境を構築するとともに、JAXAの利用実験活動を実施した。

1975年12月22日
東京都生まれ

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