2006年08月21日(月)
お父さんは小学生
text by 麻生校スクールマスター 菅原秀介
追いかけるたびに逃げていくボール。優しく接してもなかなか首を縦に振らない。全身から溢れ出る汗は、基準値をはるかに超え決壊寸前まできている。ファールも無いのに倒れるのも、決してボールの気を引く演技では無い。いくら子供を持つ親といえども、ボールの反抗期には手が付けられないようだ。「楽しいなぁ!」そう、それでもサッカーは楽しいのである。お腹の出っ張った小学生も不健康な白い肌を持つ小学生も夜勤明けの小学生も二日酔いの小学生も家事で疲れた小学生もみんな、それでも満開の笑顔で輝きを増してしまう。だからサッカーはやめられないのだ。
「子供の気持ちを知るためのサッカースクール(親向け)」と題し、麻生スクール保護者を対象に三回にわたり開催した今回の企画。延べ人数61名の大きい小学生が参加してくれました。普段見学に来られない保護者の皆さんにはスクールを知る絶好の機会になったのではないでしょうか。
今回、体験するにあたって大事なポイントがいくつかありました。普段のスクールを知ってもらうためには子供と同じ練習そして指導を体験することが一番分かりやすいですよね。そのために体験者はフィールドに入った瞬間から小学生に戻ってもらうことから始まります。ここは思い切るしかありません。自分を捨てる覚悟です。フィールドの境界線がスイッチを入れるタイミングです。ここを逃すと時間掛かりますよ。「さん」付けはもちろん厳禁です。ニックネームや下の名前で呼び合いましょう。「自分の名前じゃないけど、こんな名前で呼ばれたい」大歓迎です。聞き分けが良すぎるのにも注意して下さい。時々話を聞いてないくらいが丁度良いです。息子さん娘さんもそうですよね。「もう!ちゃんと話聞いてるの?」いつもの目くじら立てさせるあの感じです。そして難しいことは考えずただ純粋にサッカーを楽しんでくれれば準備完了。これで立派な大きい小学生になりました。後はコーチのテンションにしっかりと付いて来て下さいね。ビックリなんかしている暇はありません、置いて行かれますよ。「よーし、あっつまれー!やるぞぉーー!」
一瞬後ずさりした方、乗り遅れてますよ。このテンションが最後まで続きますからね。こうしてスクールは始まりました。
鬼ごっこから始まり、ボールを使ったトレーニング、そして試合。ボールで伝える誕生日当て合戦なんかもありました。大きい小学生にしては柔軟な発想もあり意外でした。お家に帰って実際に子供と一緒にやられてみた方、どうでしたか?ビックリしたんじゃないですか子供の発想に。大切ですよね、そうした発想の豊かさ。どんどん伸ばしてあげたい能力です。テクニック面や動きの面に関しても、初心者の方や女性の方が多かったにも関わらず、一日のトレーニングの中でかなりの成長が伺えましたし、特にサッカーを楽しむという点においては子供に負けないくらいの吸収力でした「がんばれー!!!」「赤チームがんばれー!」「お父さーん!」「お母さーん!」フィールド横で試合を観戦していた小さい親たちが、たまらずひいきの選手とチームを応援し始めたのにも驚きました。いつもとは逆の風景です。ビデオカメラを手にしていないことだけが普段とはちょっと違うだけですもんね。
一時間半にわたるスクールを終えるころにはみんなで円陣を組み、これでもかと言う位の大声で仲間との絆を深め合う姿ありました。これまた感動の場面です。「やっぱりサッカーは楽しいね。」「コーチに声をかけられることがすごく嬉しかった」「あっという間だったよ」「これをやってる子供は凄いね。」「やっぱり試合が最高!」「練習の意味やコーチの考えを知れたよ」「子供の気持ちがわかったわ」
こうして講義を含めた二時間半のスクールは、たくさんの笑顔と翌日の筋肉痛をおみやげに大盛況の中、終えることが出来ました。本当にサッカーは素晴らしいですね。見ず知らずの大人がコートの中でいつしか仲間に。「どうもいつもお世話になっております。また機会がありましたら…」いつもの社交辞令はどこか遠い所に飛んで行ってました。ただ純粋にサッカーを楽しんだ。それだけのことなんですけど。凄い力です。
「コーチ、明日もまた参加していいですか?」サッカーの楽しさを発見してくれたんですね。私たちコーチの最高の瞬間です。こんな日はビールが美味いのです。格上げして発泡酒です。
最後に、翌週の体が大変なことになった保護者の皆様、私たちコーチも皆さんと一緒に楽しんでサッカーをすることが出来ました。参加して頂き本当にありがとうございました。今回の企画はいかがだったでしょうか。サッカーをしている子供の気持ちが少しでも感じ取れましたでしょうか。これを機に子供だけのサッカーではなく親子でサッカーを楽しんで頂ければと思います。また一緒にサッカーをしましょう。
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