Ready,Betty,Go!
2008 / file05
スカウトの目
久野智昭
Kuno,Tomoaki
1996年、東京農業大学よりフロンターレの前身、富士通川崎に加入。本職のボランチに加え、サイドもこなすユーティリティープレーヤーとして9年の長きにわたりフロンターレを支える。2005年12月、惜しまれつつも引退。現在、フロンターレ強化部スカウト担当として人材発掘に邁進中。
1973年9月25日生まれ、静岡県出身。170cm、68kg。
プロ選手になるためには、最低でも2つの条件が必要。
その一つに、「特徴(武器)を持った選手であること」、自分の秀でてる特徴(武器)をどう伸ばすか、極めるかがポイントだ。技術をベースに身体的な特徴(スピード・高さ・強さ)を活かすこと。身体的な特徴がなくても、ドリブル・パス・シュート・一対一の強さなど、どれか一つでも極めることができればいい。もちろん、どれも必要だが全部もってなくてもいい。なぜなら、サッカーは11人でやるもの。人は十人十色、個性(性格)も違えば、プレーの特徴も違う。これらのいいところを集めチームがとして戦えばいい。
スカウトの仕事で試合を見て最近よく感じるのは、身体の小さい選手はスピードが絶対条件だ。走るスピードというのは、トレーニングしてもなかなか早くならないが、ボールを持ったときのスピードは、ドリブルのトレーニングを重なれば必ず早くなる。こういう選手は高校・大学の中でも活躍し、プロへ進む選手は少なくないのだ。
いろいろな指導現場を見たり、話しを聞いたりすると、ドリブルというのはネガティブに考えられているような気がする。Jリーグで活躍するパスを得意とする選手も、子供の頃からドリブルが得意で、今でもドリブルが出来るからパスが出せるのだ。子供のころから順番を間違えてパスばかりに意識させてトレーニングしてしまうと、手遅れになりプレーの幅も狭くなってしますのだ。いまでは主流となっているパスサッカーだが、原点はドリブルにあるのだ。
もっとドリブルをポジティブに考える必要があると思う。ドリブルには(逆をとること・間合い・駆け引き・タイミングの全てがドリブルに集約されている。そして、ドリブルのタッチ一つ一つがファーストタッチの精度を上げていくはずだ。その中で、個性を主張出来る選手、自分で考えて状況を打開できる選手、自分の限界にチャレンジし特徴を活かす選手になることが必要だ。
そして、サッカーは「感覚のスポーツ」だ。次にどうするか考えていたら戦えない。教えすぎると理屈っぽい選手になり、その場の状況に応じて判断できなくなる。サッカーには同じスチュレーションはない。相手・味方・グランド・天候・時間など全てが違ってくる。だからサッカーは面白いのだ。この状況に瞬時に身体が反応して動かなければ通用しない。
二つ目は、「人間性」である。自分の能力や地位におごることなく、努力しサッカーに対して純粋で素直であること、そして感謝の気持ちを持ち続けることが大切である。感謝の気持ちとは、いくら人に感謝の気持ちを持てと言われても身につくものだと思いません。自分で気づき感じたとき、はじめて理解できるものだと思います。
すでに来年の入団が内定しているGK安藤駿介選手(川崎フロンターレU-18)や登里享平(香川西)も技術だけでなく、人間性に長けた素晴らしい選手です。
内定おめでとう。そして、今後フロンターレの中心選手として活躍できる選手に育っていってほしいと思います。
2008年12月10日 久野智昭