モバイルフロンターレ

OB'sコラム

育む杜〜森一哉〜

2008 / file05

多摩川‘コ’ラシコ

森 一哉
Mori, Kazuya

1974年4月17日生まれ、徳島県出身。 川崎フロンターレ創設時のメンバー。1999年からは指導者として第二の人生をスタート。
以来、小学生を対象にしたサッカースクールから、中学生を対象にしたU-15まで様々な年代を担当した育成のスペシャリスト。現在、U-13監督として、次世代のフロンターレ戦士育成に邁進する。

先月9月20日(土)、FC東京との伝統の多摩川クラシコの前座で、U-13チーム同士の、多摩川‘コ’ラシコが行われました。
前回のコラムで、浦和レッズU-13とのボーイズマッチについて書かせていただきました。あれから2か月。選手たちがどのように変わったか、成長できているのかどうか、私自身非常に楽しみにしていました。

今回の多摩川‘コ’ラシコは、トップチームの多摩川クラシコと並行する形で何日も前から大々的に告知され、プロモーションムービーも作成され、それらを身近に触れられる中で、選手たちのモチベーションは非常に高くなっていました。チームスタッフや関係者の方々にはとても感謝しています。

HOME等々力はやはり安心感があるのか、試合当日は、いつもと変わらない選手たちがいました。前回のボーイズマッチの経験が生きているということもあると思います。
試合前のミーティングでは、いつもと同じように戦おういうことを再確認しました。そして、こういう舞台で試合ができるという、感謝の気持ちを持って戦おうという話をしました。感謝の気持ちとは、言葉としてお礼を言うことだけでない。プレーで見せること。それは、いいプレーをしなければいけないということではなく、一生懸命、全力で、最後まで戦い抜く姿を、自分に関わってくれている全ての人に見せること、感じてもらうこと。感謝の気持ちを持って、ベンチにいる選手やスタッフみんなが一丸となって、最後まで戦おうという話をしました。
ウォーミングアップから、テンションが高くなっていました。よく声も出て、みんないい表情をしていました。これならやってくれるだろうという雰囲気がありました。勝つか負けるかはわかりませんが、いつも通りの力を発揮できるだろう、楽しんでプレーできるだろうという雰囲気がありました。

実はこの多摩川‘コ’ラシコの約1か月前、U-13のある大会で、今回対戦するFC東京深川と試合をする機会がありました。結果は、1-5の惨敗。良い所がほとんどなく負けてしまいました。自分たちのサッカーを、全くといっていいほどやらせてもらえませんでした。これまで自分たちがやってきたことが、まだまだだったんだなということを感じさせられた試合でした。この経験があったからこそ、多摩川‘コ’ラシコまでの1ヶ月間でどうすべきなのかということが明確になったのは事実です。そのやるべきこととは、これまで取り組んできたことの質をさらに高めること、そのために徹底して取り組むこと。選手たちも自覚して、その後のトレーニングに取り組むことができていたと思います。

試合は、立ち上がり続けて2失点。ロングシュートとコーナーキックであっという間に0-2にされてしまいました。私を含め、選手たちも1か月前の1-5の惨敗が頭をよぎったことと思います。しかし、まだ負けたわけではない。ピッチに立っている選手たちは、よく耐え、そしてチャンスも作りながら、前半をよく戦ってくれ、0-2で折り返すことができました。
私の指導の仕方ということもあるのかもしれませんが、このチームの特徴として、ゲームの立ち上がりが良くなく、でも、あきらめずに戦い抜く強い気持ちを持っているので、後半に追いついたり逆転したりすることができるという力があり、これまでも何試合かありました。
ハーフタイムでは、少し落ち込んで帰ってきている選手たち、そして、これから試合に出ようとするベンチにいた選手たちに、まずは、自信を取り戻させることが先決でした。「自分たちはやれる、そして、これまでも追いつき逆転した経験がある。0-2で負けているけど、得点するチャンスも何度かあった。今は負けているけど、試合に負けたわけではない。あと18分ある。ベンチにいる選手たちも、ピッチでプレーしている選手たちと一緒に、一丸となって戦おう。」そういった主旨の話をして送り出しました。
後半も、立ち上がりは押されるものの、徐々に自分たちのサッカーを表現できる時間帯が増えてきました。たくさんのサポーターの皆さんに応援していただき、選手たちの力になったことは間違いありません。そして、サッカー番組でも一瞬映像を流していただけるほどのスーパーボレーシュートで1-2とすることができ、その後も攻撃の手を緩めず、相手のクリアボールに素早く反応し、みんなの気持ちを乗せてゴールへ流し込み、2-2の同点とすることができました。試合終了の笛がなるまで、逆転することを目指して戦いましたが、2-2のまま試合終了となり、今回の多摩川‘コ’ラシコは、同点で終わりました。
追いつくことができたのは、選手たちの頑張りもありますが、最後まで応援し続けてくれた、サポーターの皆さんのおかげだと思います。2ゴールともHOME側のゴールです。選手たちにとって、非常に心強かったことと思います。私自身もすごく嬉しかった。すべてに感動しました。久々に、鳥肌が立つという経験をしました。
こういった舞台を用意してくれたチームスタッフと関係者の方々、最後まで応援し続けてくれたサポーターや選手の家族のみなさん、試合をコントロールしてくれた審判団や、白熱した試合をすることができた対戦相手のFC東京深川の選手やスタッフのみなさんに、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。本当に、どうもありがとうございました。私自身も、お礼という言葉だけでなく、今後も一生懸命、全力で取り組んで、感謝の気持ちを表したいと思います。

選手たちは、この経験を生かし、現在も成長し続けています。みんないつも一生懸命、全力で取り組んでいて、本当に素晴らしいです。

次に等々力のピッチで試合をするのは、トップチームで———。
選手たちには、夢を持ち続けて今後も取り組んでいってほしいと思いますし、私自身も最大限のサポートをしていきたいと思っています。

2008年10月20日 森 一哉

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