Soma's Eye
2008 / file02
タイトルへのこだわり
相馬直樹
Soma,Naoki
清水東高、早稲田大学を経て1994年、鹿島アントラーズに加入。その後、2002年、東京ヴェルディ1969、2003年鹿島アントラーズを経て、2004年、川崎フロンターレに加入。豊富な経験値でJ1リーグ昇格を支え、2005年12月引退。現在、川崎フロンターレ・クラブアシストパートナー。
国際Aマッチ通算59試合4得点。1971年7月19日生まれ、静岡県出身。175cm、72kg。
いよいよ2008年Jリーグが開幕しました。
(10日付掲載ですが)この稿を書いているのは5日ですから9日の東京ヴェルディとの開幕戦の結果はわかっていませんが、きっと勝利で素晴らしいスタートを切ってくれていると思います。
今シーズンのフロンターレは、何といってもタイトル獲得が至上命題といっていいでしょう。5シーズン目を迎える関塚監督の下、ここまで積み上げてきた多くのものを、ぜひとも初タイトルに昇華させてもらいたいと思います。
ご存知のように、このタイトルを獲るということは決して簡単なことではありません。タイトルを獲るためには、選手層を含めた戦力から、監督、コーチをはじめとするスタッフの力、選手たちが力を発揮するためのメディカルスタッフなど、多くの力が必要になります。もちろん、サポーターの力も非常に重要です。それにフロントの力も必要ですね。これらに加えて、選手をサポートする家族の支えなども大きな力になるでしょうし、チームの勢いみたいなものや、時には運を味方につけることも必要なときもあるでしょう。
このようにタイトルというのは、いろいろな力を集めることで手に入れることができるわけですが、僕が一番大事だと思っていることが一つあります。それは、“タイトルへのこだわり”です。
幸運なことに、僕自身、現役時代には多くのタイトルを獲ることができました。そのすべてのタイトルは鹿島アントラーズで獲ったものでしたが、そこには理由があったと思います。選手も揃っている。サポーター、フロントの力も集結していた。といったことだけでなく、とにかく負けず嫌いが揃っていたというのが大きかったのではないでしょうか。
ご存知の方も多いかと思いますが、とにかくジーコは負けず嫌いです。まあジーコに限らず、ブラジル人の負けず嫌いは強烈です。試合前日のミニゲームですら真剣になりますから、チームメイトに怒鳴りつけるのは日常茶飯事で、同じチームになったらリラックスどころではないですよね。フロンターレでもジュニーニョとアウグストが、ミニゲームが終わってから言い争いをしているなんてことがよくありました。まあジャンケンで負けるのも嫌というようなことも聞いたことがあるぐらいですから、その度合は想像できますよね。そんな彼らの“タイトルへのこだわり”、“勝利へのこだわり”は、本当に強いわけです。
98年のリーグ序盤から中盤戦のことだったと思います。後半30分ぐらいで1点リードされていたゲームがありました。そんな状況で僕のミスからピンチを招いてしまったのですが、ジョルジーニョが身体を張って救ってくれました。そのとき彼は僕に近づいてきて、「俺たちはチャンピオンになるんだぞ!しっかりしろ!」と僕に怒鳴ったのです。ポルトガル語ですから細かくはわからなかったのですが、「絶対に負けてはいけないんだ。優勝するには今日勝たなければいけないんだ」というようなことですね。タイトルの行方なんてまだ見えてないような時期だったので、「こんな時期からタイトルを意識しているんだ」と思ったとともに、「負けていい試合なんて一つもないんだ」と強く思ったのでした。実際にアントラーズでは、こうしたブラジル人たちの“タイトルへのこだわり”に、日本人選手たちが感化されたのは間違いありませんでした。
こうした“タイトルへのこだわり”は、負けず嫌いの延長線上でつながっています。特にリーグ戦では1つ1つの積み重ねですし、目の前の戦いに勝つことでしか、優勝は近づいてきません。言い換えれば目の前の1勝にこだわることが“タイトルへのこだわり”となるわけです。
今季フロンターレは、タイトルを“獲り”に行きます。これはリーグ戦であれ、カップ戦であれ、一戦必勝の思いで試合に臨んでいくことだと思います。戴冠することを信じて、すでに9日の開幕からその思いをぶつけているはずです。そしてこれは、選手たちだけに限ったことではありません。サポーターも同じはずです。待っていてもタイトルはやってきません。今年こそ、みんなでタイトルを獲りに行きましょう!
2008年03月10日 相馬直樹