モバイルフロンターレ

OB'sコラム

ヤス、翔ける

2008 / file03

僕が観たいサッカー

長橋康弘
Nagahashi,Yasuhiro

東海大一中、静岡北高校、清水エスパルスと歩み、1997年、当時JFLに所属していた川崎フロンターレに加入。川崎フロンターレに所属して10年。ドリブル突破が魅力のクラブの歴史に残る右サイドの職人。現在、フロンターレ育成普及コーチとして子供たちの未来を背負う。
1975年8月2日生まれ、静岡県富士市出身。

僕が観たいサッカー。それはどこのチームにも真似できない、観ている人達をドキドキさせるような魅力のあるサッカーだ。世界のクラブチームではバルセロナのようなチームがあるが、僕はこの日本で、しかも高校生にドキドキさせられてしまった。それは3、4年前の、全国高校サッカー選手権大会での事。僕はそのチームの魅力的なサッカーに、たちまち釘づけになってしまった。結局そのチームはそのスタイルを貫き、優勝する事となったが、僕はこのチームが表現するサッカーなら、お金を払ってでも観たいと感じた。

僕が高校時代、とてもよく似たチームに出逢った事がある。それは僕と同じ静岡のライバルチームだったが、ひそかに僕はそのチームのファンだった。スタメン半分以上が県選抜の強豪チーム相手に、ゲームを支配し、個人技で圧倒していた。そして選手達がプレーを楽しみ、自信に満ち溢れ、輝いていた。僕はこの両チームに同じものを感じる。それはプロ顔負けのテクニックを武器に、「個人の力」を重視したサッカーだ。特にドリブルにはこだわりを感じる。チャンスとみればドリブルで仕掛け、2、3人に囲まれても、慌てずにボールを運ぶ事が出来る。だからといってパスをしないわけではない。面白い事にこの両チーム、ボールを繋ぐのが本当に上手い。そんな彼らのプレーは、まるで必死に取りにくる相手を、楽しんでいるようにさえ見えた。僕はこのような感覚でプレーをしている選手達にドキドキしたのだと思う。そしてこの両チーム最大の共通点は、自分達のサッカースタイルに絶対の自信を持っている事だ。彼らが表現するサッカーを観ていると、「これが俺達のサッカーだ。君達にできるかい?」と云われているような気がしてくる。僕は自分のサッカー観は間違いではなかったという自信を、この両チームからもらう事ができた。

僕にとってのサッカーは勝つ事だけが全てではない。「表現する」「魅了する」「楽しむ」事もなくてはならないものだ。そのためにも他をよせつけないテクニックが必要不可欠になる。しかし、このサッカーを現実にするのはそう簡単な事ではない。あまりにも技術に特化しているため、当然批判も多いだろうし、敵も多くつくるだろう。しかしこのようなサッカーが実際にできる事を、高校生が証明してくれている。
僕が観たいサッカー。それはどこにも負けないテクニックを武器に、そのチームにしかできないサッカーを表現する。そして想像もできないプレーで観ている人々を魅了し、選手達が心の底からサッカーを楽しんでいる。

僕はいつの日か、このようなサッカーを選手達と目指したいと思っている。

2008年07月01日 長橋康弘

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