1993年5月15日、Jリーグ開幕。谷口博之は、その日、国立競技場のスタンドにいた。ヴェルディ川崎対横浜マリノス(当時)戦を観戦するという出来事は、小学校2年生のサッカー少年にとって刺激的な体験である。そのときの感動を谷口は鮮明に覚えている。
「すごかった! ヴェルディのマイヤーがトラップして倒されてファウルされて、また走っていってトラップして倒されてファウルもらって。ペナルティーエリア近くでフリーキックになって、それは入らなかったんだけど。確か、開始直後のプレーは、そんな感じだったと思うんだよなぁ。なんか、すげぇ感動した。そのときはプロになるなんて考えてなかったですけど。5、6年生ぐらいですかね。夢として、なりたいって思ったのは」
谷口博之がサッカーを本格的に始めたのは、Jリーグ元年より1年遡る小学校1年生のときだ。横須賀市内の鴨居FCに加入し、サッカーのある生活が始まった。
「その頃、背はちっちゃかったんです。ポジションは中盤かフォワードでしたね。足も速かったし」
転機となったのは、小学校6年のとき。U‐12ナショナルトレセンに選出された。これが初めての「全国レベル」の経験だった。
「まぐれです。横須賀市の選抜と県の選抜に選ばれて、たまたま調子もよくて県からふたりだったかな」
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